Portfolio

corsage

素材はその人自身の髪の毛.日々抜け落ちる髪の毛を集めてもらう.一ヶ月ほど集めるとギョッとする程の量になる.友人知人の肉体から抜け落ちたつるりとした光沢の黒々とした髪の毛.その黒い生物のような塊を手渡される度に妙な心持ちになる.彼女らはあまりにも無防備に彼女らの一部を私に委ねる.そして手渡す時には不気味そうに自身の髪の毛を一瞥しそそくさと退散する.愛おしい名残惜しいというのはほんの数人だけ.面白いのは手渡される髪の毛がとても頑丈に梱包されていること.梱包に使用される復路はスーパーのビニール袋が主で小ぎれいな袋に入れてくることは稀.自分の細胞であるはずの髪の毛は意外にもかなり粗末な扱いを受けている.「髪の毛をください」と頼み「なんで?何に使うの?」と詳細に尋ね自分の髪の毛を提供することを渋った日でさえ手渡す時に使用する袋は大量生産されるスーパーの袋なのだった.綺麗な箱に入れリボンまでかけ手渡したのはたった一人だけだった.愛おしくもあり汚らしくもありといった複雑な感じがその状況から垣間見れて面白い.髪の毛というとどうしても“呪い”という言葉が付きまとう.さらに様々な迷信もついてまわる.女性は失恋すると髪の毛を切る,好きな人の食べ物に自分のを入れて食べさせると両思いになれる,嫌いな人の髪の毛を痛みつければ髪の毛の持ち主に同じ痛みを与えれる,等々.かと思えば愛する人に自分の髪の毛をプレゼントする習慣がある国もある.確かに髪の毛には底知れないパワーがある.コサージュを作っている時その髪の毛の持ち主とリンクするような感覚が何度かあった.なんだか鼻がツンとする感じ,そわそわしてむずむずするような感覚.つるっとごわっとした感触に人は孤独ではないのだと咄嗟に閃いたり呟いたり,突然手に発疹ができてしまったり.痒くて掻き毟って血が滲んで真っ赤になった手を見ながら,その持ち主のことを想う.コサージュをつくっている時,全身全霊でその人のことを想っている.その人と共有した思い出を紐解きながらつくっている.嬉しい楽しい記憶もあれば忘れてしまいたい嫌な記憶もあるが,そういったものを大切にしながらつくっている.